川口市退職校長会  Kawaguchi City Retirement Principal Meeing

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令和5年度のスタートに当たって
                                            
                                  川口市退職校長会 会長 南  勇

 現在、3年余りにわたって猛威を振るったコロナ感染症は子供達の教育のみならず子供たちの心の中まで大きな支障を生じました。このような子供達に退職校長会として何をなすべきか。答えは一様ではありませんが、本会として今年度、次の2つの努力目標をもとに取り組んでいきたいと思います。
 まず、その1つは川口の子供達に志と気概を与える教育を推進し、これを全面的にバックアップしていきたい。ご存じのように現在川口の小中学校の児童・生徒の学力は各学校とも学校長を中心に鋭意取り組んだ結果、かなり向上してきておりますが、全体としては県平均か平均以下という状態です。また、体力についても各領域とも上がっては来ておりますが、持久力に弱いところがございます。今の子供達はスマホ、タブレット、ゲーム、頻繁なる塾通い等、目の前のことに追われ汲々としている状態です。これらの子供達に志をもたせ、何事にも負けない、くじけないという強い心、つまり気概を持たせる教育は必要なものと思えます。先日 市内のある小学校のそばを通りましたら、正門に横断幕が張られていて、そこには『祝 150周年』とあり、その下に大きな元気のよい文字で「志と気概」をもって前進しよう‼」と、すばらしいことばが書いてありました。子供達の各教科の学力を高めることは、もちろん重要ですがそれ以上に子供達に志をもたせ、それに向かって何事にも負けない、くじけないという強い心、気概を継続的にもたせる教育は重要であり、これを全面的にバックアップしていきたいと思っております。
 次に2点目は先輩校長達が歩んだ苦難の道を再認識し、それを本会の活動方針に生かしていきたいということです。本会は残念なことに毎年5名から10名の先輩校長を亡くしております。時には本当に残念なことに15、6名の先輩校長を失っております。みな親しく膝を交えて語り合いお話をおききした先生ばかりです。この中には、あの悲惨な太平洋戦争、第2次世界大戦に招集され九死に一生を得て、復員し、その後教育に全人生をささげた方も大勢おります。その多くの方々はあまりにも苦しい体験がゆえに、周りにそれを語ることなく静かに去っていきま
した。しかし、ほんのわずかな方ですが、手記のような形で我々にこれを残された方もおります。その中のお一人で、10年近く前にお亡くなりになり、今、ご存命ならば100歳近い先輩校長の手記をここで読まさせていただきます。
「私は教育に道を求めて、教壇に立ったが半年で招集され、予備学生として三浦半島油壷の海軍特攻基地に配属され、人間魚雷として敵艦に体当たりする猛烈な訓練の日々をおくった。やがて出撃の日が決まった。その日、大変暑い日だった。815日 玉音放送がながれ終戦・・・・「国破れて山河あり」の言葉通り、茫然自失の状態で復員し、荒廃しきった祖国を見た時、ただただ涙が流れた。・・・・それから教育の現場に戻ったが荒れ果てた教育界に唖然として立ち上がる気力もなかった。しかし、廃墟となった土地にほんのわずかだが雑草がもうはえてきているのがみられ、また、自分と同じように茫然自失の状態 うつろな表情でボロをまとった多くの子供達がさまよっているのを見た時、その時私はこの子供達の目に未来に向かう光を戻さねばと思った。・・・・・

以来半世紀以上教育にささげ、今こんなにも平和で豊かな日本がよみがえることを誰が予想しただろうか。まさに奇跡といえる。私の人生も全く同じだ。試練の連続だった。あの戦争のさ中で死ぬということが少しも怖くなくなっていった。この死生観はやがて死ぬ覚悟なら何でもできるという自信にもなり、教育を自分の天職として子供達を生き生きと伸ばしていくことを願って全力で子供の教育に向かった。・・・・そして、今何もおもい残すことはない。・・・・おもえばすばらしい人生だった。・・・・あとはすべてよき後輩達にまかせよう‼」・・・・
 以上、この先輩達が書き残した手記にそうよう、我々はどれだけ教育に尽くしてきただろうか。この精神を本会の推進力としてもっともっと前進していかねばならない。・・・・そう思うところです。

 以上、今日までのご支援ご尽力ありがとうございます。今後ともご協力をお願いいたします。